機械学習を使うロボットがすべてEU AI Act上のハイリスクAIになるわけではありません。意図された目的、AIが安全コンポーネントとして果たす役割、故障の影響、適用される製品法令、第三者適合性評価の要否を順に確認する必要があります。
完成したロボットには、別の製品安全制度であるMachinery Regulationの検討も必要です。実務では「AIシステムの分類」と「機械の安全・適合性」を二本立てで評価し、共通する危険源、試験、変更履歴を追跡可能な技術文書で結び付けます。
出発点はロボットの名称ではなく意図された目的と事業者の役割
同じ画像認識モデルでも、在庫確認だけに使う場合と、人の近くで衝突を防ぐ安全機能に使う場合では評価が変わります。利用者、環境、作業、予見可能な誤使用、禁止条件、入力、出力、人的介入、誤判断時の物理的影響を一つの意図された目的として固定します。
ロボットメーカー、AI部品の供給者、システムインテグレーター、EU輸入者、販売者、導入者の義務も同一ではありません。誰が製品名を表示し、目的を決め、更新を管理し、安全に関わる大幅な変更を承認するのかを責任分担表と契約に残します。
| 確認項目 | 保存する証拠 |
|---|---|
| 意図された目的 | 取扱説明書、販売表示、利用場面、除外条件 |
| AIの役割 | 安全との関係、故障影響、人による監督 |
| 事業者の役割 | メーカー、供給者、輸入者、導入者の責任表 |
| 変更管理 | モデル、センサー、制御器の再評価条件 |
AI Actのハイリスク判定ゲートを順番に通す
公式のEU AI ActのArticle 6では、AIが対象製品の安全コンポーネントであるか、またはAI自体が製品であるかを確認し、指定されたEU調和法令の対象で、上市や使用開始前に第三者適合性評価を要するかを検討します。カメラやモーターを持つという事実だけでは判定できません。
これとは別にAnnex IIIの列挙用途も確認します。生体情報、重要インフラ、教育、雇用、重要なサービス、法執行などの区分と実際の目的を照合し、例外条件も検討します。機能一覧だけで終わらせず、AIがどの判断を行い、誰にどの影響を与えるかを記録します。
| 判定ゲート | 実務上の問い |
|---|---|
| 製品または安全コンポーネント | AIの故障が安全機能を損なうか |
| 対象製品法令 | どのEU調和法令と製品区分が適用されるか |
| 適合性評価経路 | 第三者の関与が要求されるか |
| Annex III用途 | 実際の目的が列挙された用途に一致するか |
Machinery Regulationは完成品の安全適合として進める
公式のMachinery Regulation (EU) 2023/1230は、対象となる機械や関連製品をEU市場に出す際の製品安全の枠組みです。メーカーは製品に応じてリスクアセスメント、リスク低減、必須健康安全要求事項、技術文書、指示書、適合性評価、EU適合宣言、CEマーキングを準備します。
学習機能を持つロボットでは、精度指標だけで安全を説明できません。保護停止、速度・力の制限、安全関連制御、通信断、センサー遮蔽、予期しない再起動、電源復帰、人による復旧、サイバー攻撃から危険状態に至る経路を試験し、更新後も宣言した安全範囲を維持できることを示します。

2026年改正後の日程と機械規則の訂正日を使う
Regulation (EU) 2026/1744は2026年7月27日に発効し、AI Actの一部日程を変更しました。欧州委員会のAI Omnibus発効案内では、一般のハイリスクAI規則は2027年12月2日、機械など規制製品に組み込まれるハイリスクAIは2028年8月2日から適用される日程が示されています。
Machinery Regulationの適用日は訂正文に基づき2027年1月20日です。初期公表版に見える日付を転記せず、公式の訂正PDFと最新の統合テキストを確認します。期限までに設計凍結、試験予約、供給者文書、評価機関との調整が終わるよう逆算します。
| 日付 | 計画上の意味 |
|---|---|
| 2026年7月27日 | Regulation 2026/1744が発効 |
| 2027年1月20日 | 訂正後のMachinery Regulation適用日 |
| 2027年12月2日 | 一般のハイリスクAI規則の適用時点 |
| 2028年8月2日 | 規制製品内のハイリスクAI規則の適用時点 |
二つの制度を混同せず一つの証拠体系でつなぐ
AI Act側には、役割と分類に応じて意図された目的、リスク管理、データガバナンス、技術文書、ログ、透明性、人的監督、正確性、堅牢性、サイバーセキュリティの証拠をそろえます。機械規則側には、機械のリスクアセスメント、必須要求事項の対応表、図面、回路、安全機能の検証、試験報告、指示書、適合記録をそろえます。
共通化するときは、要求元を消さないことが重要です。危険シナリオごとに、影響を受ける人、AIの寄与、安全機能、予防・保護方策、検証試験、残留リスク、責任者、変更履歴を結び付ければ、モデルやセンサーの更新がどの適合主張に影響するかを再評価できます。

上市ゲートを複数部門で審査し再評価条件を残す
開発末期の法務確認だけでは物理システムの設計変更に間に合いません。製品、AI、機能安全、サイバーセキュリティ、品質、現場運用、法務が同じ製品版と目的記述を審査します。分類メモには根拠条文、前提、未確定事項、再評価を起動する技術・商業上の変更を記します。
技術面ではISO 10218:2025とロボットインテグレーターの責任、FMEA・HAZOP・STPAによるロボットリスク評価、Power and Force Limiting接触試験も参照できます。本稿は2026年8月7日時点の情報整理であり、個別案件への法的助言ではありません。
よくある質問
AIを搭載したロボットはすべてハイリスクAIですか。
いいえ。意図された目的、安全コンポーネントとしての役割、適用される製品法令、第三者適合性評価の要否、Annex III用途を順に確認します。外観や自律度だけでは決まりません。
AI Actの評価を行えばMachinery Regulationにも適合しますか。
いいえ。相互に関係しても判定と要求事項は別です。AIガバナンスと機械製品安全の証拠をそれぞれ作り、共通する危険源、制御、試験、変更を追跡表で結び付けます。
EU向けロボットの適合作業はいつ始めるべきですか。
意図された目的とシステム構成を決める段階から始めます。訂正後の機械規則適用日と改正後のAI Act日程から逆算し、分類、リスク低減、試験、供給者文書、変更管理の時間を確保します。
確認した公式情報
- EUR-Lex:Regulation (EU) 2024/1689(AI Act)
- EUR-Lex:Regulation (EU) 2026/1744
- 欧州委員会:AI Omnibus enters into force
- EUR-Lex:Regulation (EU) 2023/1230(Machinery Regulation)
- EUR-Lex:Regulation (EU) 2023/1230訂正文
2026-08-07